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「アクセル・ワールドのSF的な疑問点と解決策」はおそらくかなり真相に近い

アクセル・ワールドのSF的な疑問点と解決策

以下ソードアート・オンライン=SAO、アクセル・ワールド=AWとします。
SAO新刊のネタバレあり。なおweb版のネタバレも少々あります。
なおこの記事の前提としては「AWがSAOのパラレルな未来だと仮定」した場合の考察を行うこととします。(この詳細な意味は後々述べます)

  • ブレイン・バーストシステムの本当の仕組み


SAO9巻&10巻で登場した「ソウル・トランスレーション」テクノロジーが、BB(ブレイン・バースト)システムの直接の原型であることは明らかでしょう。小型化したソウル・トランスレーターこそがニューロリンカーであり、「加速」が行われるロジック(脳が持つ光量子(フラクトライト)に直接アクセスし、書き換えることで脳そのものを量子コンピューターであるかのように扱う)もまったく同じです。「メイン・ビジュアライザー」という名称も、それが仮想世界(SAO:アンダーワールド、AW:無制限フィールドおよび対戦ステージ)を描画するサーバであるという点も同じです。

上記の考察記事では、「加速時のバーストリンカーの脳は、能動的な活動を行なっておらず、中央サーバで計算された結果を受け取っているだけである。その代わりに、中央サーバ内に存在する、バーストリンカーと同等の思考モデルを持ったAIが能動的な行動を行なっている」という仮説を採用するなら、「ニューロリンカーの演算能力」と「通信レイテンシ」という2つの問題を解決できるとしましたが、じつはこの仮説を採用することで解決可能な問題がもう一つあります。それが、SAO10巻で比嘉が言及している「魂の寿命」という問題です。比嘉は「脳が持つフラクトライトの容量(=魂の寿命)はせいぜい150年ほどと推測している」と述べますが、その後に続けてこのような会話があります。

「……つまり、肉体的には一週間足らずの時間でも、内部で何十年も過ごせば、その分魂が老化するわけ? それじゃ、せっかくの加速機能も意味ないでしょう。現象を回避する手段はないの?」
(中略)
「えーと、まぁ、理論的……というか、空想的にはなくもないッスよ。常時装着型のポータブルSTLみたいなデバイスを作って、加速中の記憶はそのデバイスを介して外部メモリに保存すれば、自前のフラクトライトの容量は消費されないッスから。ただ、STLをそこまで小型化するのは現状の技術じゃ絶対不可能ですし、もしその方法を採った場合、ポータブルデバイスを外すと加速中の記憶も飛んでしまうというおっそろしい問題があるッスけどね」

じつはこの部分はweb版からの改稿の際に書き足された部分であり、将来的にAWとSAOをつなぐものになるはずです(電撃版SAO10巻前半に当たる部分がwebに初出した時期(たしか2005年後半)にはまだおそらくAWの原案となるものはできていませんでした)。ここで比嘉が言う「常時装着型のポータブルSTLみたいなデバイス」こそが、後のニューロリンカーとなるものです。

しかし、この仮説を採用することで新たに問題が発生します。それこそが比嘉の言う「おっそろしい問題」、つまり、「ニューロリンカーを外している間、BB世界内の記憶はどこに行っているのか?」という問題です。

もしBB世界内の記憶がメインビジュアライザー内のAIのみに固有のものであるのならば、ニューロリンカーを外した瞬間BB世界内の記憶はすべて抹消されたのと同じ状態、つまりBBがアンインストールされたのと同じ状態になってしまうということです。しかし作中にはそのような描写は(今のところ)ありません。つまり、メインビジュアライザー内に存在するAI(おそらくライトキューブに収められているのでしょう)が加速世界で過ごした時間と同じだけ、自らの魂の寿命を消費しているということになります。

これを解決するために考えられる理屈は2つです。ひとつは、魂の寿命が150年というのは真実ではなく、もっと長い。もうひとつは、記憶を抹消した際に魂の寿命も回復する、というものです。

じつは後者の説の傍証も、web版SAOに存在します。アリシゼーション編後半で「仮想世界内で魂の寿命を200年近く使ってしまう」というシーンが登場し、その人物は現実世界に帰って来られず昏睡するのですが、「200歳の魂」をライトキューブへと切り離し、200年分の記憶を抹消することで再び現実世界に復帰することができたのです。web版から設定の変更がどのくらいあるかはわかりませんが、おそらくこのシーンがそのまま登場するならば、後者の説を採用するのが合理的だということになります。

AWの登場人物は、物語中に説明がある通りみな非常に若いです。BBの開発者がゲームクリアまでに魂の寿命が使い切られることはない、という前提のもと加速世界を設計したのだとすれば、近い将来ハルユキたちは「これまでの記憶を抹消して魂の寿命を回復するか、それとも消費した分をそのままにしてこれからも生きていくか」という2択を迫られることになります。黒雪姫やニコたち高レベルバーストリンカーがどのくらい無制限フィールドで魂の寿命を消費したかは推測するしかありませんが、おそらく10年20年単位で消費しています。これは上記の仮説に述べられている「自分のコピーをどう考えるか」という問題と同じレベルの大きさを持つことでしょう。

※ちなみに加速世界内で10年過ごすには1000倍の加速で87.6時間必要です。BBプレイ歴が3年、現実時間で毎日5分程度接続していれば十分到達できる時間です。

  • ブレイン・バースト作者の真の目的

上記考察記事では、BB作者の真の目的は「AIを研究するためである」と述べています。これがおそらく正しいであろうと自分が考える理由について以下では説明します。

まず、SAO10巻で説明された「アリシゼーション計画」です。これは「高適応性人工知能」を作る計画だと説明されており、大規模な仮想世界(アンダーワールド)もそのためのものだという設定です。もしアリシゼーション計画が目標を達成できていれば、現実世界にはたくさんの人工知能が存在しているはずですが、上記記事の通りSAO世界よりも時系列的には後であるAW世界には、人工知能が一般的なものになっているという描写はありません。つまり、AW世界の過去では、アリシゼーション計画(またはそれに相当するもの)は存在しなかった、あるいは失敗したということであり、AW世界とSAO世界がパラレルワールドであるという作者の過去の発言(およびこの記事の前提)はそういう歴史の分岐を意味しています。つまり、AW世界ではまだ高適応性人工知能は実現しておらず、BBプログラムはAW世界におけるアリシゼーション計画にあたるものなのです。

「出生直後からニューロリンカーをつけている必要がある」という条件も、SAO10巻の比嘉の言葉から説明できます。比嘉は「思考原体」はすべての人間に共通しており、アンダーワールド内の個体はすべてそこから育成されると説明しましたが、おそらくAWのメインビジュアライザー内に存在するAIも、思考原体からニューロリンカーのデータをもとに成長したものであり、故にBBプログラムをインストールした際に本人とまったく同じ人格が保てるのだと推測できます。

そして、「加速世界におけるレベル10がゲームのクリアとなる」という設定について。BB作者の目的がAIをつくることだとすると、なぜそのような一見関係のない目的が設定されているのでしょうか。これもアリシゼーション計画において、アンダーワールド育ちのAIたちに「上位の存在によって設定された規則を破れない」という欠点が存在したのと同様に、「レベル9以下のプレイヤーたちのコピーたるAI」には何らかの欠点が存在し、そのまま本人たちから切り離して運用することができないために、レベル10に到達させなければならない、ということなのでしょう。ただ、BB内のレベルが、AIにどのような影響を与えているのかは、まだ推測するための材料がありません。

それでも、ひとつ言えるとするならば、「現実世界の肉体との同期性」です。レベル9以上のバーストリンカーにのみ開放される「フィジカル・フルバースト」という機能は、BBプログラムによってロックされているため9レベル未満は使えないのではなく、9レベル以上のリンカーのみが持つ「ある特性」によって、フィジカル・フルバーストが使用可能になるのだとしたら。おそらくその「ある特性」とは、AI内のフィジカルイメージと現実の肉体がどの程度同期しているか、コピーたるAIにとって本来存在しないはずの「肉体」をどこまでイメージできているかを測るものになるはずです。SAO10巻で比嘉のコピーが崩壊した原因は「コピーであるという自意識に耐えられなかった」となっていますが、じつはそれは「肉体」の存在が意識に与える影響が原因だったのではないでしょうか。何もない状態からいきなり肉体のないコピー体になったことによって比嘉の精神は崩壊してしまったが、自らの肉体を強くイメージングできる高レベルバーストリンカーのコピーAIなら、精神崩壊に耐えられる……。もしそうだとすれば、レベル10のバーストリンカーのコピーAIこそが真の「高適応性人工知能」だということになります。

  • 惜しいところまで行っていたアスキー編集部

週刊アスキーの編集部によるアクセル・ワールド裏設定の考察ですが、これも実はなかなかいい所を突いていたといえるでしょう。

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これは、じつはまんまアリシゼーション計画におけるキリトの役割なんですね。AW世界全体を仮想世界だと考える説が一時期出ていましたが、その流れで行けばこの仮説はかなり正しいものになっていたでしょう。おそらくSAO既刊は読んでないと思われるアスキー編集部の人間が、こういう仮説を出してくるのは非常に面白いなぁと思いながら記事が出てきた当時は読んでいました。