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lochtext

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「あなたたちの仲間としてのわたし」の物語の終わり

日本の雇用と労働法 (日経文庫)

日本の雇用と労働法 (日経文庫)

思ったより時間がかかってしまったのですが(最初は1日で読み終えるつもりでした)、「日本の雇用と労働法」を読み終えました。印象的だったのはやはり、「現代日本のメンバーシップ的雇用が戦時体制を経て強固なものとなった」という繰り返される記述です。大塚英志は知識人にとっての戦争とは「わくわく」するものであったのだ、と「初心者のための「文学」」で書きましたが、戦時体制下にあって、企業雇用のメンバーシップの強化というのは一般庶民の労働者たちにとっての「わくわくする現実」であったのかもしれない、と思うわけです。

なんらかの目的を持った組織のメンバーになる、というのはある意味「非日常」的な行為です。日本全体にとってそれは「皇国臣民」の一員になることであったし、日常の労働においてはそれが「企業/職場のメンバー」であったわけです。そして日本では、「戦争」というわくわくする非日常が終わったあとでも、「企業のメンバー」であるという非日常(物語)はなくならなかった。逃げろ、そして生き延びろ - インターネットの備忘録のような事例は、この(今や多くの場面でほころびをあらわにしている)物語に上手く適応できなかった(というと語弊があるような気がします。もちろんhase0831氏を責めているわけではありません)事例として見ることができるのではないかなぁ、と思うわけです。

個人的には上記の「物語としてのメンバーシップ(企業の何が人をモチベートし、そして過労死に追いやるか)」と、メンバーシップという形態が現在の産業構造にとって適切なのかどうかという2点が主な興味の範囲です。「物語としてのメンバーシップ」なんてものは最初から虚構じゃなかったの、という話は以前にしました。後者についてはまだ考え中。

「日本の雇用と労働法」は大学の講義で教科書として使われているということで、もちろん教科書的に構成された密度の高い本でした。もうすこし時間が経ったらまた読み返すことにします。とりあえず次は新しい労働社会―雇用システムの再構築へ雇用の常識 決着版: 「本当に見えるウソ」にかかることにします。